ケンタウルス制作日記。  
     
  3月13日土曜  晴れ

富士山の綺麗な日。 山梨美術館の神野さんから送られてきた写真でホームページ作成。
 
     
 
3月14日日曜 晴れ

今日は3時に神野さんにアポを取り美術館へ。まだ工事中だったが、美術館の周りを囲っていたフェンスは無くなっていた。なので上の写真に写っている青いフェンス写真がレア写真となる。
20日までエントランスは使えないので、屋外の池に浮かべる発泡の山から来週の水曜日から始めることにする。
美術館の方に「山梨美術館になっていますよ・・・」と言われ早速ページを直した。
正解は山梨県立美術館です。
展覧会も2日と書いてしまっていたけど3日からというのが正解だったようなので、それも直した。
一人で外のブールデルのケンタウルスを計る。高さは台座を入れて2.79mで幅が0.6m。やはり子供時代の印象と異なり小さい。でもまじまじと見てみて台座にある植物のレリーフは何という名前か?左肩を上げずに頭を肩に乗せる不自然な姿勢?人間としてのバランスで考えた時に腕が太すぎる?など疑問が浮かぶ。
関係無いがケンタウルスは馬の胴体部分に胃腸があるのか、人間の半身の部分に胃腸があるのか?それとも器官が2個づつあるのだろうか?実に疑問だ。そにかくこの疑問にたいして何か知ってるかたメールください。
 
     
 

3月15日月曜 晴れ

8時に朝食、隣で両親が美術館に手伝いに行くと言い出している。いったいどんな手伝いがあるというのだ。重いものは持てないし、少し動けば気持ち悪いと座り込んでしまうのに。
手伝おうと思ってくれるのは嬉しいことなのだが。
昼食を済ませ、近くのカインズホームセンターに防水の作業灯を探しに。
20Wで60センチぐらいで3900円。ちょっと高いけど売っているのはわかった。
その足でYAMADA電機に見に行く。
もしかしたら安いかもと思ったんだけど、売ってなかった。
当たり前か。

家に戻り、サスペンスの再放送を見ながらWEBの作業。隣で編物をする母が「これ10年以上前の作品だね。だって西郷輝彦禿げてないもの」と言っていた。
辺見エミリも違う番組み出ていたけど彼女もだいぶ老けたかんじだ。

 
     
 

3月15日火曜 晴れ


10時に目覚め昼食。父が降りてきて「ケーヨーに連れていってくれるけ・・・」と言うので車で出かけた。鶏糞を買うためだが定年して庭で菜園を作るのがもっぱらの趣味だ。

明日から作業に入る予定。

 
     
 

3月16日水曜 晴れ

ケーヨーでボンドやガムテを買う。
色とりどりのガムテープを見つけ、ケンタウルスの台座の部分はグレーのガムテープで作ろうかなと思う。黒と黄色でブロンズの根元を作るのもいいかな。
11時過ぎに美術館へ。
ペリカンの人が慌しく作業をしていた。
いよいよ美術館リニューアルって感じだ。
神野さんに倉庫を開けてもらい、作業開始。
1.5倍にするので台座も入れると4Mを越える。
ちょっとでかいな。一人では持て余す大きさだ。
垂木を車から降ろし、まず胴体づくり。小さな物を粘土で作る時も芯作りって大切なんだよな。芯が真っ直ぐで腕が曲がっているとどうしようも無い。骨折して骨が出てしまったようなものだ。そこは彫刻だから直す事はできるけど、これがまた時間がかかる。
なので最初が肝心。
横幅は270Cmなので発泡のボリュームを考えて200Cmにする。
幅は90Cmなので30Cmにした。
途中足を付けるために計り直しに美術館を出たんだけど、足のセンターで測ると幅が80Cmしかなく、今のままでは胴長になってしまう事に気が付いた。30Cmほど胴体部分を短くした。5時ごろ「1.5倍にするんですよね・・・」と聞かれたけど、僕自身意外と小さく見える。その印象から2回計り直したけど合ってるはずなんだ。
とは言え、最終的には4M以上だからね。かなり迫力がでるはず。
話は戻り、昼は母がおにぎりとランチジャーの入れ物全てにスープを入れてたもの。
飲みきれない量だ。それに味がしない。

ともかく手を動かしてゆっくり仕事をするのは楽しいものだ。

 
     
 

3月17日木曜 雨

夕方すげー雨上がりの奇麗な景色が広がっていた。
薄曇の空にいくつもの飛行機雲が南アルプスの山々の後ろに消えていた。

今日は11時に家を出て、ブールデルの本を探すために竜王町図書館に車を止めた。
最近できた建物らしく奇麗な2階建ての建物だ。

流石町立小さい図書館だったけど、DVDにCD、映画の上映会もするらしい。
来週は戦場のピアニストとポスターが張られていた。
それも無料だ。
僕は2階に上がり美術の棚を探した。
ブールデル、ブールデル、とBを探してみたものの、ボッシュやボッテチェルリばかりで結局検索してもらうことにした。
僕の見ていた場所とは違う棚から一冊カタログを出してくれた。
弓を引く男の像が表紙で背表紙を見ると、やっぱ山梨美術館の文字があった。

一回読んで抜粋したものをまたページアップしようと思う。
それとケンタウルスの背景も少し書いてあり、これもページでクイズにするものいいかなと思う。
何故目を閉じているのか? と連想させながら、最後にこの背景を読む感じにすると面白い。

 
     
 

3月18日金曜 晴れ

11時に美術館へ。

今日から倉庫から館内での作業。
倉庫は湿度とか温度管理がされているらしくTシャツでも作業ができたんだけど、館内は寒くてやだなと思っていたら、そんな事はまったくなく、これまた快適。

今日は垂木で作ったベースに発泡を組み上げていった。
かなり発泡を運び出したつもりだったけどいざ組み合わせていくと必要な形か見つからないんだよな。火曜日に倉庫からもっと出してこないと。

山梨美術館のトイレは入り口が奇麗なブルーとピンクで色分けされていて、所謂ステレオタイプな男女の色分けで好きではないが、奇麗なトイレだと思う。マークを見ないで直ぐに分かるし、有名な作家の作品のようでもある。ソルルウィットとか・・・えー天窓を作る作家???思い出せない。ジェームスタレルだ。

 
     
 

3月24日 水曜 くもり

母親の用事を済ませ美術館へ。
なかなか制作に集中できないのだ。
明日は父が美術館を見学したいなんて言い出している。
さて今日は上半身の制作を進める。
昨日出力したケンタウルスの写真にサイズを書き込んだのでそのサイズを1.5倍にしながらの制作。だけど1.5倍だと弱いんだよな。何故か大きくしてあるのに外の作品と同じぐらいに感じてしまう。それが学芸の神野さん感じたらしく「これ1.5倍にしてあるんですよねー」と僕と感じ方は一緒のようだ。基本的には1.5倍にする予定だけど腕周りなど印象的な部分はもっと強調してもいいかもと思っている。
曇りということもあって4時半ごろ暗かったので、内部に仕込んだ蛍光灯を点けてみた。
蛍光灯は外から見えないようにしようと思っていたけど以外に露出している部分は気にならなかった。
あのであまり神経質にならずに制作を続けよう。

今日は、首と両腕をと付けた。
ケンタウルスは腰にハープを載せていて、右腕がぐーと真後ろにそのアープを落ちないように押さえている。その角度は首同様にかなり無理な姿勢だ。

左腕は比較的楽に後ろ側に向いているけど、走りながら両腕を交互に出さないで同時に出しているあの不自然さがあるんだよな。
タイトルに言及すれば瀕死のケンタウルスなのだが、ブールデルはこの彫刻に何処に瀕死をイメージさせるメッセージを詰め込んだのだろう。1982年の山梨美術館巨匠ブールデル展カタログによれば断末魔を表現されていて、目をつむった顔、うなだれた首とある。

 
     
 

3月24日 金曜 くもり

今日は11時に美術館へ。
早めに家を立たんだけど、カメラの電池が無くなったのでコジマ電気に寄ってから行ったんだ。
で、電化製品を眺めてしまった。
3CCDのビデオカメラが11万円になっているんだよな。
買いたいなーと思いながら見たり、電子辞書の音声が出るタイプを探して発音させてみたり。
セイコーから出ていたんだけど男性の声だったな。
それにしても高い。2万か4万で3万円ぐらいが主流。
辞書も21冊ぐらい収められていてさ。
そんなに頭良くてどうすんの?
一冊をもっと細部まで詰め込んだほうが良いんじゃないのと言いたくなる。
だって、辞書なんて和英、英和、広辞苑ぐらいでいいじゃん。
なんでそんなのにワインソムリエ辞典なんてのが入ってくるのよ。

今日はケンタウルスの下半身部分の制作。
見上げながら足の位置を確認する。
この像は右足だけ伸びている。
瀕死のケンタウルスというタイトルなのでこの足も直ぐに折り曲げられるのだろう。
よく見れば左足の折り曲げ方が後ろ足2本より浅いので後ろから沈み、左足、右えと動きが移動していくように制作されているのが分かる。
フムフム。
ただ台座の部分、作品では草のある土の上という設定だろうが右足部分がどっかり削られいて、全体に垂直水平を保っている。
たぶんここに僕がこの像から瀕死さを感じないかもしれない。
もっと倒れこんだ馬ならお尻がドンと下がるはずなのに。
下げられていないんだから。
やっぱ断末魔には歪みやウネリが体全体を支配するように思うんだ。

逆に言えば、限定された中でこのテーマを作りあげるためにはかなりの技量が必要なんだろう。
演劇で顔だけで愛を表現しないとか言われているのと同じなんだから。
またギリシャ神話のケンタウルスのイメージを神格化したまま現すには踏み外せないものがあるのかもしれない。
例えばキリストの立ちション姿とか。
小便に漬けられたキリスト像が物議をかもした作品もあったな。

とにかくこの日記は中途半端な日が多いと思うが、もし読んでいる人がいましたら消化不良でしょうね。今日も書きたい事があるけど ルパン三世 カリオストロの城を見るのだ。

 
     
 

3月26日 土曜 晴れ

今日は10時にくろがねや屋へ。
母に買い物を頼まれたからだ。
キッチンタオル、トイレットペーパー、ティッシュペーパー。
紙ばかりだな。
それにマジックッリンにクラフトテープ。
あとエアークッションの椅子。
買い物をしていると父から電話が入り「コンピューターの電源切るぞ」と言うので当然切り方を知っているはずも無くコンセントを引き抜くきだ。
僕が消すからと家に一旦戻ることにした。
こうやって、実家だと制作の前にあれやこれやとやらないとならない。

今日は台座にグレーのガムテープを貼りこんだ。
僕としてjはブールデルの台座に使われている大理石の代わりにどんな素材が発泡に合うか考えたうえでこのテープにしたんだ。
色はセメント色で美術館の彫刻に使われている座に合うし、発泡と梱包用のガムテープは相性がいいというより、見る人のイメージが繋がり易い。
1本10Mなんだけど全然足りないので近くのダイソーに買いにでかけた10本100Mもあれば足りるだろと思っていたら結局ギリギリだったな。
で、ケンタウルス1.5倍は今日ほぼ完成した。
しっくりしているけど何か物足りない。
どうしようかなー
細部をもう少し明日いじるかな。

 
     
 

3月27日 日曜 晴れ


今日はケンタウルスが完成した。
まず台座に灰色のガムテを貼り付ける。

奇麗に張り合わせた昨日の仕事の上に斜めに張りこんでいく。

作品のイメージがこれで大きく変わる事はないだろうが、あとほんの数パーセントの作品の向上のための努力だ。

もしかしたら0.003%ぐらいの向上かもしれない。
この無駄なようなあがきがきっと今度の作品に活かされていくのだろう。

美術館からカタログを2冊、図書館からカタログを1冊を借りたんだ。
ホームページ制作のためだけど、僕はこれから出来るだけ展覧会ごとにこのようなプロセスを公開していくスタイルで制作していきたいと思っている。
展覧会の動員を増やすための一つの方法だと思うし、鑑賞者はより多角的に作品に触れられる。
逆に言えば作品その物、作家に対するイメージを悪くする恐れもあるだろう。
でも僕はこれからも公開していこうと思う。
物を作る人間が(僕が)格好悪くたって、対して深い部分で制作をしていなくたって問題ではない。
そもそもそういったイメージがおかしいんだ。

『おだわ日本の八百屋になる』

話は変わるがブールデルを購入している美術館にブールデル個人の画集が無い。

それほど人気が無い作家なのだ。


現在人気が無くなってしまった原因はいくつかあるだろう。

宗教をテーマにしている。彼の言葉にあるように素朴な表現である。
文化の違う我々にとって宗教的なテーマに入り込めないのだろうし、ロダンのような卓越したテクニックに比べればやっぱ見劣りする。

が、カタログを眺めてみて僕がブールデルの作品の中で気に入っている傾向がある。

それは立ちポーズが多い中で(箱根は全て立ちポーズ)体が流れた彫刻を何点か制作している。

勝手にブールデルらしさをこの流れる彫刻群に見出したい。
きっと彼の素朴な表現に軽やかさが加わって僕に作品を見え易くしているのかもしれない。

制作をしていると警備の人が作品を眺めながら「これ恐竜けー・・・」と声を掛けてくれた。

「いえ外にあるケンタウルスずらよ・・・」と僕は答える。 「ほーけー。そやーわからんじゃんね・・・」と警備員さん。

とにかく仕上がったので、余分な発泡を倉庫に運び、今度は発泡山の制作だ。

展覧会まであと 8日 (宇宙戦艦ヤマト風)

 

 
 

3月31日 木曜 晴れ

東京から昼に戻り制作開始。
風が凄くてまいる。

フラットな底の部分は屋内で作れたけど、いざ外に出してみると発泡は飛ぶは、竹串は転がるはで今日の制作を断念。

 
     
 

4月1日 金曜 晴れ


さて、昨日終われなかったので今日は9時に出発。
昨日なんとか作った底の部分の上に発泡を積み上げる。
かなりアバウトで、形は最終的に決めればいので高さとだいたいの大きさのボリュームを大き目の発泡のパーツで組んでいく。

山梨には富士山があるけと自然なあのなだらかな形はある程度大きな作品で作らないとちょっと物足りない。

そこで今回はもう少し角度とつけることにする。
エジプトのピラミッドぐらいの角度のほうが、自然に逆らうようでいいな。
ただ今度は風の問題がある、あまり角度があると今度は風に吹き飛ばされる恐れがあるからな。

美術館では明日のセレモニーの準備で掃除やら搬入やらでザワザワしていたな。
作品はなんとか4時ごろ完成。
作品を浮かべてみる。
良い感じで浮かんだぞ。
少し物足りない部分へ発泡を付け足す。
さてどんな動きを見せるかなと考えながら見ていると中央までスーと流れて奥の縁でしばらく止まってしまった。
この作品はこんなんでいいと思う。
見て良い感じのポジションを僕自身が操作できないってのがいい。
たまたま来た時に『あれなんだ』 と思われ見られたり、木陰に隠れて誰も気づかずに終わってしまったり。


 
     
  4月2日 土曜 雨、くもり